不眠やのぼせ、イライラなど、更年期にはさまざまな症状が起こります。
症状の出方や程度には個人差がありますが、ひどい場合には1日中寝込んでしまい、
仕事や家事に影響が出る場合もあります。
特に、寝つきが悪い、途中で起きてしまう、熟睡できないなどの不眠の症状は、
睡眠時間が減ることに直結するため、できるだけ早期に解決したい症状です。
今回は、そんな更年期の不眠について勉強していきましょう。
更年期とは、閉経の前後5年間、合計10年間を指します。
この期間は、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌が急激に減少し、
心身ともにバランスを崩しやすい時期です。
更年期症状と呼ばれるさまざまな症状が出てきますが、
その中でも日常生活に支障をきたすものを更年期障害と呼びます。
更年期障害のなかでも頻度が高いものの1つが、不眠です。
更年期女性の約半数が不眠を訴えています。
不眠は、眠りが浅い(熟眠障害)、眠れない(入眠障害)、
寝てもすぐ目が覚める(中途覚醒)、朝早くから目が覚めてそこから眠れない(早朝覚醒)、
といった4つの症状に分けられます。不眠症状はどれか1つの場合もありますが、
それぞれが組み合わさっている場合が多いです。
更年期に不眠症状が起きやすい理由として下記が挙げられます。
更年期には、ほてりやのぼせ、多量の発汗などの症状が起こりやすくなります。
これらの症状は、眠りづらさや途中で目が覚める原因になることがあります。
加齢に伴って、睡眠は浅く短くなります。
更年期はその影響を受ける年代ですので、不眠症状が出やすい時期になります。
不眠が続くと、眠れないことによる不安感がさらに不眠を呼ぶことになります。
眠ろうとすればするほど、逆に目が冴えてしまい、
眠ることへの焦りがさらに眠りを妨げるという悪循環に陥る場合があります。
更年期女性の多くは、仕事において重要なポジションであったり、
子どもの受験や独立、親の病気や介護が重なる時期で、非常にストレスの多い年代です。
日々のストレスは、更年期症状の悪化を招くことになり、不眠に繋がる恐れがあります。
40〜50歳代の女性が不眠を訴えている場合、更年期症状の可能性が高いですが、
甲状腺疾患やうつ病など、まったく違う病気が原因であることも考えられます。
不眠の症状が更年期症状によるものなのかは、
病院での検査・診断が不可欠になりますので、まずは受診をすることが大切です。
不眠が更年期症状によるものの場合、薬物療法などの治療が行われ、
それによって症状が改善することが期待できます。
日常生活で不眠症状を改善する方法としては、下記が挙げられます。
人間には体内時計があり、ほぼ1日の周期で体内環境を変化させる機能が備わっています。
この体内時計が乱れると、不眠になる可能性が高くなります。
就寝・起床時間を一定にすることで、体内時計の乱れを防ぐことが大切です。
睡眠時間には個人差があり、3時間で起きる人もいれば、8時間しっかり睡眠を取る人もいます。
睡眠時間が短くても、日中に強い眠気を感じなければ、睡眠は足りていると考えられます。
無理に長い時間ベッドにいる必要はありません。
太陽光などの強い光を浴びることで、体内時計が調整されます。
光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じるため、朝日をしっかり浴びることで、
夜の寝つきの改善に繋がります。また、夜間に照明などの強い光を浴びると、
体内時計が遅れる要因となりますので、夜更かしは禁物です。
運動による疲労は、不眠解消に効果的です。ただ、激しい運動は逆に寝つきを悪くするため、
ゆったりと続けられるウォーキングやヨガなどの有酸素運動がおすすめです。
また、運動する時間は午前よりも午後のほうが効果的です。
ストレスは、不眠やその悪化に繋がります。
趣味を見つけ、その時間が取れるよう工夫することが大切です。
また、リラックスして無心になる時間も大切です。
特に寝る前に、半身浴や読書、落ち着く曲を聴くなどすると、
副交感神経が活発になり不眠症状を改善しやすくなります。
不眠を改善するために、寝る前にお酒を飲んで寝つきを良くするという方法がありますが、
この行動は逆効果です。気絶するかのように眠れますが、深い睡眠が減り、
睡眠時間も短時間になるため、睡眠の質が低下してしまいます。
寝室が睡眠に適した環境になっているか、確認・改善することが大切です。
まず、光が入らないようにカーテンは遮光のものにしましょう。
特に近くに街灯やコンビニなどがある場合、その強い光が体内時計を乱す原因になります。
次に、就寝中はできるだけ静かであることが重要になります。
人の話し声が睡眠を一番阻害するため、テレビやラジオをつけたまま寝るのはやめましょう。
そして、寝室の温度や湿度は、下記の内容が理想的です。
病院での治療を受けることで症状の改善が期待できます。
治療法としては、低下した女性ホルモンを補充するホルモン補充療法と、
体質や症状に合わせた漢方薬の処方などがあります。
更年期障害は、症状の種類や程度に個人差があるため、
似たような症状でも人によって治療法が異なる場合があります。
更年期障害によって日常生活に支障が出ることは、できるだけ避けたい事象です。
特に不眠は、眠れない辛さだけでなく、日中の眠気やだるさに繋がり、
気分や意欲も低下してしまいます。更年期による不眠症状が疑われる場合には、
婦人科を受診し、生活習慣の見直し・改善をすることが望まれます。
◇ 鍼灸師・有山知恵子からのアドバイス ◇
更年期の方は卵巣から脳へのフィードバックが少なくなってきて、頭に熱がこもりやすく、睡眠の質が落ちてきてしまいます。良質な睡眠をとるためには、睡眠前の体温を下げてあげることがポイントです。そのためには、1日の中で夕方に体温のピークを持ってきてあげると良いので、試してみてください。
有山知恵子
鍼師、灸師(国家資格)
日本体育協会認定AT(合格率1%以下の時代に取得)
栄養士(都道府県知事資格)
病院のリハビリ室や、シンクロやアメフトなどのスポーツ現場で、栄養士やアスレティックトレーナーの資格を活かし活動。
東洋医学と女性の健康の第一人者として、
主に横浜市、東京都新宿区でのセミナーを定期的に開催。
セラピストとして抜群の人気を誇り、その知識を講師として後輩セラピストに伝える。
「更年期に悩む女性のサポート」
「妊活に悩む女性のサポート」
「子育て中のママの健康」
の専門家として、
同業者向けセミナーや、
患者様向けに教室を開催。
現在、一般社団法人婦人科セラピー協会で、技術を指導するテクニカルディレクターとして活躍中。