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安全基準の定め方

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 日本の水道水は飲み水としても使える安全性が保たれています。 専門家が行っている、飲み水の安全性に対して、私たち一般市民はまったく無頓着にそれを信用しています。 

もちろん、最終的には信頼して任せるしかないと思いますが、どのような経緯で安全性を保障してくれているのか 

その政治的な取り決めについてはある程度知っておくことも必要かと思います。 

 

様々な化学物質に対する、許容範囲を定める基準値はどのように設定されているのでしょう。 

往々にして、その実態が不明瞭であるところの、基準値の選定方法について、講談社 ブルーバックスの『基準値のからくり』には調べられる範囲での、事細かな事情がまとめられています。 

 

水道水の話はもちろん、ほかにもいくつも興味深い事例が載せてあるのでその中からいくつかピックアップしてみましょう。 

 

◆優先座席付近の携帯電話の使用について

 

携帯電話が社会に普及し始めた、かなり初期の段階から 

心臓ペースメーカーへの影響を考慮して、電車内の優先座席付近では携帯電話の電源を切ってください 

というアナウンスが流れていたことはご存じの方も多いと思いますが 

 

その一方で、携帯電話の電源を切る人などめったに見ることはありませんでしたし携帯電話を使用する人すらいたのが実情でした。 

 

今でも、優先席のそばで携帯電話の使用をためらわない人たちが実に多いものですが 

私は心配性でして、当初から何か事故が起こらなければいいがと、ハラハラしていたものでした。

結論から言うと、実際のところ、携帯電話によるペースメーカーへの影響はかなり近づけないと出ないようで 

よほど体に接近させない限り、心配することはなさそうです。 

 

つまり、不必要に厳しい安全基準を採用した結果 

その必然性を民衆が信用せず 

結果として、安全基準そのものが形がい化してしまったといえるでしょう。 

 

このような例を鑑みるに、安全基準というのは、単に基準値を示すだけではなくその基準を逸脱した場合に、どのようなリスクが、どの程度の確率で生じるのかを具体的に明示しなければ、 

その基準が社会的に無視されてしまう可能性があるということです。 

 

携帯電話の例では、たまたま、基準が無視されても事故が起こらなかったのですがそれは単に運が良かっただけの話で、今後も常にこのように 

問題が起こらずに済むとは限らないでしょう。 

 

◆毒物の安全基準 

 

化学物質の毒性は急性毒性と慢性毒性に分けることができます。 

・急性毒性・・・短い期間摂取しただけでも影響が生じる 

・慢性毒性・・・長期間摂取することで影響が生じる(歯、骨、内臓などに現れる影響) ・慢性毒性を示す物質は、発がん性と非発がん性に分類できる 

・さらに発がん性物質は、遺伝子を直接傷つけることによる発がん性と、そうでないものに分類できる 

 

以上を簡単にまとめると次のようなツリー構造で分類できます。 

急性(A)or 慢性 

 慢性⇒非発がん性(B)or 発がん性 

発がん性⇒遺伝子を傷つけない(C)or 遺伝子を傷つける(D) 異常の A~D を、実際の運用上は以下の3つのカテゴリに分けて対処しています。

1.(A)急性毒性のある物質 

2.(B・C)慢性毒性のある物質のうち、非発がん性のものと発がん性だが遺伝子を傷つけないもの 

3.(D)慢性毒性のある物質のうち、直接遺伝子を傷つけるような発がん性を示す物質 

以上の分類において1と2はいずれも、 

ある一定の摂取量以下ならば健康への悪影響が生じないとみなすような「閾値」を設定することができるとされています。 

 

しかし、3についてはどんなに微量であっても影響は免れないと考えられるため、原則的に閾値の設定ができません。 

 

 

1や2のように閾値の設定が可能なのであれば、その閾値を基準値として守れば人体への影響をゼロにすることができることになります。 

しかし、現実にそのような閾値が決定できるのかどうかはむつかしい部分もあります。 

  

過去の事故の報告例を十分に集めることができれば 

そこから、何らかの事故が起こらなくて済む最低の基準濃度を推定できるかもしれません。 

 

 また、動物実験を行う方法が採用される場合もあります。 

その場合は、ラットなどの小動物に対し、人間の方が 10 倍感受性が高く さらに人間の中にも個体差があって、より敏感な人にも影響が出ないように考慮する ためにさらに 10 倍を見積もり 

あわせて、ラットの閾値よりも 100 倍小さい量を(つまり 100 分の 1 の量)を基準値とする考え方もあります。 

どうして 10 倍×10 倍としたのか、というところに関してはあやふやで、経験則といってもいいものだと思いますが 

 

できるだけ、安全で安心できるように大きめに見積もっているに違いありません。 

 

一方、3のような閾値を設定できない発がん性物質はどうしているのでしょうか? 一般には、その物質を含む水を一生飲み続けたときに、10 万人にひとりが発がんす るような濃度を基準として

それ以下を目指すという考え方が採用されています。これを「発がんリスク 10 の-5 乗」といいます。 

 

しかし、これもあくまでも一般論であって、このように理想的な考え方で現実社会に適用できない場合もあります。 

たとえば、代表的な毒物であるヒ素は、発がんリスクを見積もることが難しいことと、 そもそもヒ素を除去することが技術的にむつかしいという理由により 現在では、現実的に達成可能かどうかを考えたうえで、基準値が設定されています。 

 

また、ヒ素に関しては、日本の実情に関して言えば、水道水から摂取する量よりもコメから摂取する量の方がはるかに多いのですが 

このような食品中のヒ素の量を厳しく管理しようという動きは日本ではみられません。 コメを中心にした日本の食文化が大きく影響しているといえましょう。 

 

◆水道水の水質基準には洗濯の仕上がりや、お茶の風 味も加味 

 

水道水が生活の質を落とさないように配慮するためには、 

単に安全性に配慮するだけでは十分ではありません。 

 

水道水質基準には「健康に関する 31 項目」のほかに、「性状に関する 20 項目」が定められています。 

性状とは、味や色、においなど、健康面での安全性とは別に、快適な生活を

 

送るうえ で必要と思われる品質を意味します。 

飲み水としての風味だけではなく、生活用水として、入浴、トイレ、洗濯など様々な用途に求められる品質も考慮されています。 

 

たとえば銅は健康への配慮からは 2mg/L 以下という基準が定められています。 その一方、性状の観点からは 

洗濯水として使用する場合、洗濯物に着色しないために 1mg/L を超えないこと飲料水の風味としては、2.5mg/L を超えると 50%の人が渋みを感じるということで 

 

これらの 2, 1, 2.5mg/L という3つの基準値のうち最も厳しい基準にあたる

1mg/L が採用されているのです。 

 

つまり、健康への配慮だけされていたとしたら、ひょっとしたら日本の水道水で選択すると 

銅によって洗濯物に着色が起こってしまうような事態になっていたかもしれないということですね。 

 

亜鉛に関しては、日本ならではのお茶へのこだわりが基準値となっています。 WHO のガイドラインでは 3mg/L を超えると白濁や被膜が生じることによる性状への 影響が指摘されていますが 

日本ではそこからさらに一歩踏み込んで、1mg/L を基準値としています。 1mg/L 以上になると、沸騰させたときにお湯が白く濁り、かつお茶の味が損なわれる からだそうです。 

 

◆まとめ 

世の中の安全基準というのは、一般市民には成り立ちが不明瞭なものが多く 携帯電話に関する安全基準のように、まったくの形骸となってしまうケースも少なくありません。 

 

実際、安全基準を定めるのは、統計的にきちんと必要なデータがそろわない場合も多く 

その場合は、過去の事故の事例など、経験則に頼らざるを得ない部分もあります。 

 

水道水などに関しては、専門家に任せておけばいいだけかもしれませんが、 我々ひとりひとりが生活の中で守っていかなければならない安全基準などが もしあるのであれば、どのように基準がつくられたか、だけではなく その基準が守られなかった場合に、どのようなリスクがどの程度の確率で現れるのか も 

 

知らなければ、ひとりひとりに守らせることなど徹底できるはずがありません。 

 

何か基準値を策定する場合には、それに反した時のリスクの評価もあわせて 決定した側からの情報の開示をわかりやすく行っていただきたいと願うばかりです。

 

 
 
 

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本日は、東京都世田谷ちゅうしん整体院 村山先生のコラムを紹介いたしました。