functional massage

意志を強くする書『陰騭録』(いんしつろく)

作成者: 村山 俊介|Aug 9, 2021 11:15:00 PM

 

 

◆努力が続かない理由

 

目標に向かって努力するということに苦痛を覚えることはありませんか?

 

途中で投げ出したくもなります。

 

他力本願に頼りたくなり、神頼みに打ち込む場合もあります。

 

しかし、努力する意思をくじく最も大きな要因は

何をするのが正しいのか、よくわからない、ということです。

その迷いが、そのまま行動の勢いを鈍らせ 自分の行動に疑いをさしはさみ、

その疑いを振り切って行動することに苦痛を覚えます。

 

結果、疑いに負け、努力を中断することになります。

 

◆知識を先行させると意志が鈍る

 

いみじくも、古代中国を題材にした数々のの歴史小説で知られる

作家の宮城谷昌光先生がよく小説の中で言及するように

知が先行すると人は不安になるものなのです。

 

知識に頼って正しいか間違っているのかを判断すること

たとえば、自分の行動は本当に目標に向けての正しい手段であるのか、

ということを知識で判断しようとすること、

これはその人を不安にし、行動力を鈍らせます。

 

知識が先立つよりも前に、もっと根本的なところで言ってしまえば、

頭よりも心で、 正しいかどうかということを判断しなくてはなりません。

 

◆良心に従って行動することが、意志を強くする

 

哲人 中村天風(てんぷう)師(護国寺駅に直結の「天風会館」に名を遺す近代きっての偉人)はその判断の基準を、「本心良心に照らして」といっています。

 

お気づきかと思いますが、この時点で行動の成否は

目標につながるかどうかが問題ではなくなっています。

 

それよりも、善悪の問題になっています。

 

良心に基づいて正しいと感じる行いをすることは、

とても気分のいいことであります。

その積み重ねは人に勇気と自信を与えます。

 

自分が目標を達成することとはまったく関係のない

日常、世間の中で行っている、生活上の様々な雑事

人との関りの中で、積極的に良心にかなった正しい行いをすることは

 

目標に向けて努力する力を下支えします。

 

また、目標に向けて何をすることが正しいことなのかが

わからない状況において、手探りで進めていくときに

意志がくじけないための力になります。

 

これは、迷信めいていると思われるかもしれませんが

現代の教育において抜け落ちている

絶対に肝要な生活上の知恵であります。

 

 ◆陰騭録とは

 

このことについては、より積極的に自分の生活に

いかしたいとお考えの方は、『陰騭録』をご一読ください。

 

中国 明朝末期の人物 袁了凡 が息子のために書き与えたといわれているのが『陰騭録』です。

 

陰騭という語は、『書経』の中に出てくる「惟れ天下 民を陰騭す」から来ています。 「陰」は現象としては表には表れない世の中を裏側から定める作用のこと「騭」は定め るということで

天の法則が、人民の在り方を見えない裏側から治めているというような意味です。

 

このような人の人生・運命を支配する法則とは何であるのか というのが、この陰騭録の内容なのです。

それは、結論だけ言ってしまうと、非常に道徳的な行為、行動のことなのです。

いわゆる「陰徳を積む」ということを推奨しています。

それが、どのようにしてご利益をもたらすのか、という理屈は全くありません。 科学的な証明はありません。

 

それでありながらも、言葉の力とでもいうのでしょうか、

ものすごい説得力によって、勇気づけられる書であります。

 

また、この書の特筆すべき点としては、著者の袁了凡自身がつけたという

「過格録」というものについての教えです。

 

過格録とは、日々、自分の行った細かな善事、悪事を 日記のように書き連ね、それぞれに点数をつけるというものです。

善事なら+1
悪事なら
-1

 

たとえば、それで 3000 点を目標にして善事を行う誓いを立てることで

ある種の目標を達成するために祈願するというものです。

 

3000 という具体的な数値も妥当で参考になりますし、

実際にこれをやってみると、 自分が自分に対して甘く見過ごしていたような

ちょっとした悪いことを、 見逃さずに気付けるようになるということです。

 

『陰騭録』を読んでみたいという方は、安岡正篤先生の著作で

『立命の書「陰騭録」を読む』とういものがあります。

大変コンパクトでありながら、きちんと陰騭録を最後まで網羅していておすすめです。

 

本日は、東京都世田谷ちゅうしん整体院 村山先生のコラムを紹介いたしました。