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生まれか 育ちか

作成者: 村山 俊介|Oct 7, 2020 11:30:00 PM

 皆さんは、ご自分の能力や性格が、生まれつきの遺伝にどの程度影響されていると思いますか?

 

ヒトゲノムの解明以来、特定の精神疾患の原因となる遺伝子を特定する研究が色々と行われてきました。

 

たとえばうつ病にかかってしまうのは、遺伝による影響が大きいのか、それとも育ってきた環境による影響が大きいのか、という疑問に答えるための研究です。 いわゆる「生まれか、育ちか」という疑問です。

 

犯罪者になる遺伝子

 

 たとえば生涯で犯罪を犯す確率に寄与する遺伝子です。

ある遺伝子のセットを持っている場合、凶悪犯罪を犯す確率が 828%高くなる。 そんな遺伝子の組み合わせがあります。(米国)

これだけ聞くと驚くかもしれません。

 

しかし、なんのことはありません。それは Y 染色体です。

 

要するに男性であるということなのです。

 

 しかし、男女を比べれば 828%と、驚異的な数字に思われますが 別の見方をすればたいしたことではありません。

 

つまり、すべての男性の中で投獄されているのは1%程度ということです。(米国) これはこれで、高い数字といえなくもないですが、Y 染色体が犯罪の原因であるというには 物足りない数字といえます。

 

つまり、犯罪を犯すに至るには、Y 染色体以外にも様々な要因がありうることを示唆しています。

 

サルの凶暴性を決める遺伝子

 

 サルについて行われた研究で、狂暴で攻撃的なサルに育つか、品行方正なサルに育つかを決定づける遺伝子について調べた研究があります。

それは、セロトニンの輸送タンパクに関わる遺伝子の型の違いが影響しているという結論でした。ただし、それほど単純ではありません。

母親に育てられたかどうかという、生育環境の影響もかなり大きかったのです。

 

  1. 母親に育てられれば品行方正に育つ(遺伝子型には関係なく)
  2. セロトニン輸送タンパクの遺伝子型がいいものであれば、品行方正に育つ(生育環境に 関係なく)
  3. つまり、狂暴に育つのは、遺伝子が悪く、かつ、母親に育てられなかった場合のみ 遺伝子と生育環境の両方が望ましくなかった場合にのみ、狂暴に育つということなのです。

 このような、生まれと育ちの組み合わせによって結果が変わるという現象が、人間にもいくつか見つかっています。

 

ヒトのうつ病、精神疾患などに関与する遺伝子

 

 たとえばうつ病の発症について。大きなショックとなる出来事を何回経験したか、といいう 「環境」と、セロトニン濃度の調節に関わる「遺伝子」の両方が悪かった場合に 発症率が悪化します。


 たとえば、遺伝子が悪くても、大きなショックを受けることがなければ平穏無事に暮らせる というわけです。

逆に大きなショックを受けたとしても、遺伝子が良ければ、うつ病を発症せずに堪え切れる ということにもなります。

 ほかにも、親に虐待されて育った子は、のちに自分が虐待を行う側になる確率についての研究や、10 代でマリファナを吸うと大人になってから精神疾患を発症する確率についての研究においても、同様の結果が出ています。

つまり、関連する遺伝子の型と、育ちの環境(虐待する親、マリファナの経験)のいずれも 悪い状況の時に影響が表れるということです。

また、遺伝子とは違いますが、こんな例もあります。

脳に外傷性の障害を負っていることが、反社会的人格障害(犯罪などの社会性に反する行動 に走りやすい傾向をもつ障害)の原因といえるかどうかについてです。 脳の障害という身体的な特徴もまた、遺伝子の型と同様に、それだけが単独で反社会的人格障害を起こすわけではないというのが結論です。育った家庭環境の悪さが重なった時にはじめて影響が出るのです。

 

都合よく遺伝に頼って、環境をおろそかにしてはいけない

 これらの事例は、精神の悪いあり方に焦点をしぼっていますが、学習能力についても同じことが言えると思います。

 

確かに悪い環境で育っても、目覚ましい学習能力を発揮し、優秀な成績を収める生徒はいる かもしれません。しかし、それは悪環境に耐えうる身体的(遺伝的)素質に依存している可 能性もあります。

 

 だから、「あの人がうまくいっているから、同じ生活をしていても、学習能力が落ちること はないんだ」などという論理を振りかざしてはいけません。あなたの遺伝子型はひょっとしたら悪い環境に適応できないかもしれないのです。だから、あなたはあなたで、常に自分が信じるベストの学習環境に身をおいて、能力を高め続けてください。

 

 

 

本日は、東京都世田谷ちゅうしん整体院 村山先生のコラムを紹介いたしました。